性・風俗事件/強制わいせつ
1 概要
当番弁護士(※1)の派遣要請を受けて、当番弁護士として接見に行ったところ、すでに勾留決定(※2)がなされており、資力オーバーで国選弁護人(※3)も選任されていない状態でした。罪名は強制わいせつ罪。知人を自宅に招き、関係を持とうと手を出そうとしたものの、その行為は相手の意思に反していたという事件です。
急いで私選弁護士に就任するために契約書の取りかわしをして、弁護人選任届を取り付けて、弁護活動を開始しました。
【※1】当番弁護士
逮捕された方が無料で1回、弁護士を呼んで相談することができる制度。逮捕されたらまず、警察官、検察官または裁判官に「当番弁護士を呼んでください。」と伝えて、弁護士を呼んでください。派遣された弁護士からその後の手続きの流れや取り調べにどのように対応したらよいかなど、ご説明させていだたけるかと思います。
ご家族などの要請で当番弁護士を派遣することもできます。身の回りで逮捕された方がいる場合、逮捕された場所の弁護士会に電話をしてください。
【※2】勾留決定(起訴前)
逮捕のあと、引き続き身体拘束をするという内容の裁判所の決定。住居不定、証拠隠滅のおそれあり、逃亡のおそれありのいずれかの要件を満たし、かつ勾留の必要性があると裁判所が判断した場合になされます。
逮捕直後(勾留決定前)に弁護人に就いた場合には、勾留阻止のための弁護活動もさせていただけます。
【※3】国選弁護人
勾留決定(起訴前)がなされた後、私選弁護人に依頼する費用がない場合などに国の費用で弁護を頼むことができる制度。私選弁護人とちがって、弁護士を選ぶこと(指定すること)はできませんが、国選弁護人だからという理由で弁護活動の権限が制限されるということはありません。
2 初動
すでにされている勾留決定に対する準抗告(※4)をしました。準抗告が認められるには、罪証隠滅のおそれがないこと(すでに客観証拠は押収されていること、ご本人も犯行を認めていること、証拠隠滅をする理由がないこと等)、逃亡のおそれがないこと(仕事、社会的地位があること、同居の家族がいること等)、他方で、釈放の必要性が高いこと(ご本人しかできない仕事があること等)を裁判官に分かってもらわなければなりません。初回接見の際に、これらに関する事情を聞き取り、ご本人から誓約書(被害者の方とはいかなる方法を用いても接触しないこと、捜査機関からの呼び出しには必ず応じること)を、同居の家族からは身元引受書(ご本人の身元を引き受け、私生活においても厳重に指導・監督をするという内容)を取り付け、書面にして提出しました。
しかし結論としては、準抗告は棄却。次は早期釈放に向けて示談の準備です。
【※4】勾留決定に対する準抗告
裁判官のした身体拘束をするという内容の決定に不服を申し立てる手続き。
3 示談
弁護人選任届を検察庁に提出してすぐ、担当検事に謝罪と示談の申し入れをしたいので、被害者の方の連絡先を教えてほしい旨の連絡をしました。性犯罪の場合、被害者が加害者本人はもとより弁護人でさえも連絡先を知らせてほしくないと言われることもありますが、本件においては、すでに被害者の方が代理人弁護士を付けておられたので、代理人弁護士の連絡先を教えてもらうことができました。
さっそく、被害者代理人弁護士に連絡をして、ご本人から謝罪文を預かっていること、被害弁償金の支払いの準備があることを伝え、今回の事件について被害者の方にお許しいただけないか、申し入れをしました。ところが、初回の回答は「示談には応じられない」とのことでした。
しかし、その後も被害者代理人弁護士と話をする中で、ようやく示談に応じていただけるとの回答を得られたので、すぐに示談書を作成し、取り交わしたのち、示談金の振り込み手続きを行いました。
4 釈放
振り込み手続きまで完了したら、その後はすぐに担当検事に示談が成立したとの報告をしました。担当検事としては、振り込みが完了しているところまで確認をしたいとのことでしたので、被害者代理人弁護士とのやり取りをまとめた報告書に示談書と銀行の利用明細を添付して、提出をしました。
その後、不起訴処分となり、ご本人は無事に釈放されました。
5 まとめ
刑事事件は、時間との勝負です。この件は、ご本人とその家族の一番の希望が早期の釈放だったのですが、示談に向けて迅速な対応ができたので、処分日よりも3日間前倒しでご本人が釈放されました。
もちろん、被害者の方との示談は相手のあることですから、必ずしも示談が成立するというわけではありませんが、弊所にご依頼いただきましたら、精一杯の弁護活動をさせていただきます。
また、家族が突然逮捕されたとなれば、ご家族の方も不安になられるかと思います。複雑な刑事手続きについては、ご理解いただけるまで何度でもご説明させていただきます。お困りの際はぜひご相談ください。
監修:弁護人法人キャストグローバル 刑事担当