暴力事件の弁護活動
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自白事件(犯罪事実を認めている場合)
暴行罪・傷害罪を犯してしまったとしても、
- ・偶然の事故
- ・被害の程度が軽微
- ・同種の前科前歴がない
- ・示談が成立した
などの場合には、早期の身柄解放や不起訴処分を獲得できる可能性があります。
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否認事件(犯罪事実を争う場合)
犯罪事実を争う場合、早い段階で弁護人を付けて対応する必要があります。
なぜなら、特に暴力事件では、加害者側も被害者側も興奮状態にあり、暴行の態様をはっきりと覚えておらず、両者の言い分が食い違うということがよくあるからです。
犯罪事実を争う場合、- ・自分が犯人であるとする証拠がない、又は証拠が不十分である
- ・自分の行為が犯罪にあたるとする証拠がない、又は証拠が不十分である
- ・自分の行為が正当防衛に該当する
ことなどを主張して、不起訴処分や無罪の獲得を目指す弁護活動を行うことになります。
このように、自白事件と否認事件とでは、弁護方針が全く異なります。
以下では、事件類型ごとにその特徴や特徴に沿った弁護方針をご説明します。
暴行(刑法第208条)とは
暴行罪は、殴る、蹴る、叩く、突く、押すなど、相手の身体に直接触れる行為が典型例として考えられます。もっとも、相手の身体に直接接触がなかったとしても、相手の身体に影響を及ぼす可能性のある行為は暴行罪に問われる可能性があります。
判例では、
- ・毛髪の切断
- ・驚かせる目的で人の数歩手前を狙って石を投げる行為
- ・狭い室内で驚かす目的で日本刀の抜き身を振り回す行為
などが、暴行罪にあたるとされています。
暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料となっています。科料とは、1000円以上1万円未満の金銭を納付させる刑罰です。
傷害・傷害致死(刑法第204条・第205条)とは
傷害罪は、殴る、蹴る、叩く、突く、押すなどして、相手の身体を傷つける行為が典型例です。暴行罪にあたる行為で相手がケガをしてしまうと、傷害罪にあたります。
傷害罪にあたる行為をして、相手が死亡してしまうと、傷害罪よりも重い傷害致死罪に問われる可能性があります。相手を殺すつもりで傷害を負わせたのかどうかが、殺人罪との違いになります。
傷害罪の法定刑は1ヶ月以上15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっており、傷害致死罪は、傷害罪よりも重い3年以上の有期懲役となっています。
脅迫・恐喝(刑法第222条・第249条)とは
脅迫罪は、本人やその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対して危害を加える旨を告げることが対象となります。
たとえば、
- ・「殺すぞ」
- ・「お前の子どもを痛い目に合わせる」
- ・「ネットにばらまいてやる」
などと相手に告げる行為が典型例です。
脅迫罪の法定刑は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金となっています。
恐喝罪とは
恐喝罪は、相手を怖がらせて金品を奪う行為が対象です。
たとえば、
- ・道行く人に因縁をつけて脅しお金を出させる、いわゆる“カツアゲ”
- ・店舗やネットなどでお店側に悪質なクレームを言い、無理やり返金に応じさせる
行為などは、恐喝罪の典型例です。
相手を怖がらせる程度がより強度になると、強盗罪(刑法第236条)に問われる可能性があります。
なお、恐喝罪は未遂(金品を奪うことはできなかった)の場合でも処罰されます。
恐喝罪の法定刑は、10年以下の懲役となっています。
器物損壊(刑法第261条)とは
器物損壊罪は、他人の物を損壊させる行為が対象です。この「損壊」には、一般的に言う物を壊す行為だけではなく、その物の価値を減少させる行為も含まれます。
- ・お店で使っているお皿に放尿する行為
- ・養魚池の水門を開いて鯉を流出させる行為
- ・看板を取り外す行為
- ・集荷された荷物から荷札を取り外す行為
などが、器物損壊罪にあたるとされています。
器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料となっています。科料とは、10000円以上1万円未満の金銭を納付させる刑罰です。
殺人(刑法第199条)とは
殺人罪は、殺すつもりで人を死亡させる行為が対象です。人の生命を奪うという重大な価値の侵害であるため、
- ・未遂(被害者が死亡するには至らなかった)でも処罰される
- ・予備行為(人を殺すために包丁を準備するなど)も処罰される
- ・死ぬことを相手が承諾していた場合であっても処罰される
など、その規制対象が幅広くなっています。
殺人罪の法定刑は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役となっています。
法定刑に死刑又は無期の懲役が含まれているため、裁判員裁判の対象事件です(裁判員法第2条第1号)。