イメージしやすい犯罪類型
多くの人が、お店に”万引きは犯罪です”というポスターが貼られていたり、街や路上で”ひったくりに注意”という看板が立てられているのを見たことがあるのではないでしょうか。また、近年では振り込め詐欺(オレオレ詐欺)の被害も多く、注意を呼び掛けるテレビ特集も定期的に放送されています。
このように、財産事件は日常に根差した犯罪として、イメージしやすいのが特徴です。
財産事件には様々な背景・動機がある
財産事件では、生活に苦しんでいるといった背景や、物やお金が欲しいから犯行を行ったという動機があることがほとんどです。
しかし、中には、物やお金などの利益を得ることが目的ではなく、ストレス発散などのために窃盗をしてしまう人もいます。これは、クレプトマニア(窃盗症)といわれ、専門的な治療が必要な精神障害の1つです。
被害弁償・示談が重要
財産事件では、(強盗致傷罪、強盗殺人罪を除けば)被害者には身体や生命に対する被害は生じていません。そのため、金銭的な被害を賠償することで、被害者との示談が成立すれば、釈放や不起訴処分、執行猶予など、依頼者に有利な結果を得られる可能性が高くなります。
窃盗罪(刑法第235条)とは
窃盗罪は万引きが典型例ですが、置き引き、住居侵入盗、車上荒らし、ひったくりなど、様々な行為が窃盗罪として処罰されます。また、近年特に問題になっている振り込め詐欺等の特殊詐欺事件では、ATMなどで現金を引き出す“出し子”や、家人が目を離したすきにキャッシュカードなどをすり替える“受け子”には、窃盗罪が適用されます。
窃盗罪の法定刑
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
もっとも、窃盗をした日を基準として、その行為前10年以内に、窃盗(又はその未遂)で3回以上、懲役6ヶ月以上の刑を受けている場合には、常習累犯窃盗として3年以上20年以下の有期懲役が科せられます。窃盗罪は再犯率が一貫して上昇し続けており、平成25年には48.0%となっています(「犯罪白書」[法務省・平成26年])。
クレプトマニアとは
クレプトマニアとは、「窃盗症」とも呼ばれる症状で、盗みたいという衝動をコントロールすることができず、悪いことだと分かっていながら盗みを繰り返してしまう精神疾患のことをいいます。自分でも抑えることのできない精神疾患であり、適切な治療を受けないと、繰り返し窃盗を繰り返してしまうことになります。
クレプトマニアの法定刑
クレプトマニアの方は、一般的には万引きをすることが多く、この場合、窃盗罪が成立します。窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。万引きを何度も繰り返してしまうと、実際に科される刑は重くなります。ただし、クレプトマニアの方のケースでは責任能力に問題があるとされる場合もあり、そのような事情が認められれば、通常の刑よりも減刑されることもあり得ます。
強盗罪(刑法第236条)とは
強盗罪は、お店や銀行の店員を刃物で脅して金を奪うような行為が典型例としてイメージされるでしょう。また、ひったくり犯が被害者に暴行を加えるなど、窃盗罪から強盗罪に発展する場合もあります。
強盗罪は、被害者を負傷させると強盗致傷罪、死亡させると強盗殺人罪として厳重に処罰される可能性があります。
強盗罪の法定刑
強盗罪の法定刑は、5年以上の有期懲役となっています。強盗致傷罪は無期又は6年以上の懲役、強盗殺人罪は死刑又は無期となっています。
強盗致傷罪や強盗殺人罪には法定刑に死刑又は無期の懲役が含まれているため、裁判員裁判の対象事件です(裁判員法第2条第1号)。
詐欺罪(刑法第246条)とは
対面で虚偽の説明をして金品を騙し取る従来の詐欺罪に加え、近年ではネットオークションにおける詐欺、振り込め詐欺(オレオレ詐欺)、クレジットカードの不正使用など、詐欺罪が適用される行為態様は年々増えてきています。
詐欺罪の法定刑
詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役となっています。
詐欺罪には罰金刑がないため、被害金額がそれほど大きくなくても起訴される可能性が十分にあります。
特に、特殊詐欺などの組織犯罪にかかわってしまった場合、被害金額が低く、未遂に終わっている場合でも、初犯で実刑が科される事例は多くあります。
横領罪(刑法第252条)とは
横領罪は、知人から借りた物を無断で勝手に売ってしまった場合が典型例です。横領罪の法定刑は5年以下の懲役となっています。 業務上横領罪にあたる場合には、横領罪よりも重く処罰されます。これは、会社の経理担当者が現金を着服する場合が典型例です。業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役となっています。
背任罪(刑法第247条)とは
背任罪は、他人のために仕事をしている人が、利益を得る目的でその人を裏切り、結果として相手に損害を生じさせた場合に成立します。判例では、銀行や信用組合など金融機関の職員の行為が背任罪に問われています。背任罪の法定刑は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
商標とは
商標権とは、業務上の信用を維持・向上させるため文字や図形、記号等に付与される権利のことです。商標の代表例としては、トヨタや任天堂のロゴが挙げられます。
商標権侵害となる行為
商標権が付与された商品等を、業として(=個人使用ではなく)、無断で勝手に使用する行為が、商標権の侵害になります。たとえば、偽ブランド品などを商品として販売・輸出入する行為が典型例です。
商標権侵害の法定刑
商標権侵害の法定刑は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科となっています(商標法第78条)。