年末年始を挟んで、ゴーン氏関連では慌ただしい動きがあり、虚偽記載罪と「本命」かもしれない特別背任罪の追起訴がありました。
その後の弁護人による保釈請求も、再度の保釈請求も認められなかったようです。
事件の中身はさておきまして、この事件は刑事事件の身柄拘束について議論を提供しています。
国内外から「人質司法」の批判が集まったことはもとより、勾留、勾留延長、勾留取消、勾留理由開示、再逮捕再勾留、保釈など身柄拘束に関するあらゆる法制度が論点になった上、ゴーン氏が知名度や社会的地位が極端に高い人物であったことなどから、ご本人には大変お気の毒ですが、身柄拘束の問題を議論するには格好な題材と言えるかもしれません。
ゴーン氏の身柄拘束に関しては、国内外から批判の声が大きく、とりわけ勾留延長を却下した判断において裁判官がそれらの批判を受け入れたのではないかという意見があります。
また、このような勾留延長却下をしておきながら、裁判所はその後の特別背任罪での逮捕・勾留や勾留延長の場面では粛々と検察の請求を認め、保釈も認めないでおり、その態度が一貫していないようにも思えます。
検察と違って裁判所は個々の裁判官が独立しており、組織として判断することはありません。ですから、裁判所の態度が一貫していないように見えるのは判断した裁判官が違うからだという説明が可能です。一部の裁判官がスタンドプレイに走った可能性も否定しきれません。
ただ、私には裁判所の一連の判断はあまりぶれておらず、全体を通じて特異な判断もしていないと思っています。
次回以降、勾留や勾留延長、保釈等の条件(法律要件)を参照しつつ、ゴーン氏の身柄拘束に関する個々の判断を検討してみたいと思います。