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元検事のコラム

刑事事件に関わる基礎知識から話題のニュースなど掲載

日産元会長の逮捕について~検察当局の狙いは何か(その2)~

捜査

検察の狙いが「不正に私服を肥やした」容疑の立件にあるのではないか、と前回の記事で述べました。

具体的な罪名として考えられるのは、業務上横領や特別背任あたりでしょう。

不正に報酬を得たのであれば、感覚的には、背任より横領の可能性が高いと思います。

業務上横領にせよ特別背任にせよ、会社に直接損害を与える犯罪ですので、

仮に成立するならば、よほど少額ではない限り、悪質であることは誰の目にも明らかでしょう。

一般論として、職務上管理していた会社財産を着服すると、業務上横領が成立することになります。

典型例は、経理担当者が会社の資金を着服するような場合です。

ただ、今回は業務上横領の成立は容易ではないかもしれません。

というのも、ゴーン氏は広範な権限を有する代表取締役であり、

しかも、報道によると、自らの分を含む役員報酬の決定権を持っていたといいます。

この点で、経理担当者の場合と異なるわけです。

報酬決定権限があったことは、ゴーン氏が強欲であるというトーンで報じられているように感じますが、

業務上横領罪の成立という観点からすると、否定する方向に作用する可能性があります。

なぜなら、横領は、他人の財産を管理する者が、権限を逸脱する行為に及んで私服を肥やす犯罪であり、

逆に権限の範囲内の行動であれば成立しないと考えられるからです。

日産においては、例えば2014年度、取締役の報酬合計額が29億9000万円以内と株主総会で決定されており、

その範囲内でゴーン氏は自らを含む取締役の報酬を決定する権限があったことになります。

そして、有価証券報告書には取締役の報酬合計額が約16億3000万円であると記載されていますから、

公表ベースでは前述の上限額を使い切っておらず、約13億6000万円の余裕が残っていたことになります。

となると、ゴーン氏は、自身の報酬をあと13億6000万円だけ増やす権限があったということになると思います。

この年のゴーン氏の報酬は、有価証券報告書の記載では約10億3500万円となっていますが、

例えば

「本当は自分の報酬を20億円と決めた。でも、世間の反発を危惧して、10億3500万円と公表したのだ」

というのであれば、何ら権限の逸脱はないことになります。

取締役の善管注意義務違反の問題はあるとしても、他社との比較等からして不当だと断定できないのならば、

善管注意義務違反は否定されると思いますし、ましてや横領は成立しないでしょう。

このように、報酬の話であれば業務上横領が成立しない可能性が出てくるわけで、

起訴して有罪を得るのは容易ではないかもしれません。

検察は、日産の取締役と司法取引をしているといいますし、

数か月にわたって続けられてきた内部調査の結果を得ているはずですから、

逮捕までに相当な量の証拠を手に入れていると考えられます。

したがって、虚偽記載罪以外にどのような犯罪が成立するのか、既に見通しを立てていると思います。

他方、現在までに報道に出てきている不正流用等の疑惑は、

海外の不動産を子会社を通じて購入させて使用していた疑惑、

家族の旅費を会社に負担させていた疑惑、

実姉にアドバイザー業務の名目で年間10万ドルを交付していた疑惑などですが、

これらはゴーン氏が会社財産を食い物にしていたことを印象づけるものではあるものの、

刑事責任の追及という点では今ひとつという印象が否めません。

海外不動産については、あくまで名義は子会社のままだと思いますし、

そうであればゴーン氏が受けた利益は〔(家賃相当額)-(ゴーン氏が実際に負担していた家賃額)〕にとどまり、

金額としては、年間でせいぜい数千万円といったところだと思います。

旅費の件も実姉に交付していた件についても、仮にこれらが事実であったとしても、

報酬を約50億円過少に記載していたという虚偽記載罪の規模感からすれば、少額と言わざるを得ません。

ほかに、退任後に受け取る予定の報酬として約50億円を積み立てていたという報道もありますが、

これについては、前述したような決定権限の範囲内か否かの問題もありますし、

まだ交付していないお金について横領が成立するか、疑問が残ります。

そもそも有価証券報告書に記載義務はないという見解もあるようですので、

横領どころか虚偽記載罪の成立すら危ういかもしれません。

このほか、ゴーン氏が資産管理会社を通じて行ったデリバティブ取引で生じた損失約17億円を、

会社に負担させていたという報道も新たになされました。

事実なら特別背任罪が成立する可能性がありますし、悪質な事案だと言えそうです。

もっとも、この件は2008年のことで、通常なら時効が完成している事案であり、

海外に滞在していたためにゴーン氏には時効が成立していないとしても、

証拠資料は失われているでしょうし、関係者の記憶も減退しているでしょうから、立証は難しいかもしれません。

また、この損失の付け替えについては最終的に銀行側が承諾したということですが、

特別背任罪が成立するようなことを銀行がそう簡単に承諾するとも思えず、

やはり、正当化する余地のある何らかの事情があったのではないかと思います。

このように見てみると、現状出てきている情報では、未だ決め手を欠くという印象です。

検察は「不正に私服を肥やした」容疑の立件を狙っている、というのが私の読みですが、

本命として狙っている事件はまだ報道にも出てきていないように思うのです。

何らかの隠し球があるのだろうと思っているのですが、果たしてどうなるのでしょうか・・・

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