前回身柄拘束に関する裁判所の判断について述べましたが、まさに判断に問題があったと思われる事例が報道されました。
留学の在留資格で日本に滞在していたベトナム人による大麻所持事案で、逮捕後に裁判所が勾留を却下し、捜査機関が在宅で捜査を進めて起訴した結果、本国に帰国されてしまったために公判が打ち切りになったという事案です。勾留が却下された後、検察は準抗告をしたものの、それも退けられたということでした。
帰国されてしまった結果を見るまでもなく、この件は「逃亡のおそれがある」として勾留すべき事案でした。留学の在留資格で滞在していた中、大麻所持が発覚したならば退学は避けられず、そうすれば在留資格も失って帰国しなければなりません。そのような状況にある人物が、わざわざ起訴されて裁判を受けて、有罪判決を受けるまで日本に滞在し続ける実益があるでしょうか?実際の事案の詳細は分かりませんので100パーセント断定はできませんが、通常はどう考えても逃亡のおそれがあります。起訴ができたということは、釈放後任意の取調べには出頭したということだと思いますが、普通はそれすら困難でしょう。
このことは外国人(日本から離れて生活するのが困難な人は除く)のみならず、海外に生活の本拠地がある日本人も同様です。国外逃亡するという、捜査や裁判から逃れる最強のカードを切れる人物の場合、「逃亡のおそれ」が非常に高く、これを阻止するために勾留はやむを得ないのです。
今回、ある意味当然の結果となったわけですが、裁判所に対する批判は避けられないと思います。