大阪で保釈取消しで収容予定の者に逃走されるという事案が相次いで発生しました。
幸いどちらも捕まりましたが、大きく報道されましたし、近隣に大きな不安をもたらしました。
今年6月には実刑収監予定の男に逃走されるという事案が発生して大きく報道されましたし、その他にも勾留執行停止中の被告人が逃走した事案や保釈中の被告人が逃亡する事案が報道されています。
こういった報道は今年特に多いように感じられますが、それはなぜでしょうか?
可能性としては
①保釈の件数が以前より増えたため、それに伴って逃走事案が増えた
②実は以前から同様の事案があったが、報道されていなかっただけ。それが今年になって報道が増えた
というあたりが考えられると思います。
①に関してはまず間違いなく当てはまると思います。
裁判官が保釈を認める傾向は、ここ数年顕著であり、5年くらい前の感覚では「保釈はあり得ないだろう」と考えられたケースでも保釈が認められる場合が増えてきました。
保釈が認められる場合というのは、ざっくりと言えば、逃走したり罪証隠滅する(被害者等に働きかけるなど)危険が小さい場合で、以前も「まあ逃げないし罪証隠滅のおそれもないだろう」というケースでは保釈が認められていました。
それが、例えば「この人逃げる可能性あるんじゃないの?」と思えるようなケースでも保釈が認められる場合が増えてきているわけで、一定数の逃走事案が発生するのは当然です。
ただ、報道が増えていることについては②もあると思います。
特に、単なる保釈中の逃走事案は、以前から(多くはありませんが)ちらほらあったのですが、報道されることはほとんどなかったと思います。
それが、昨今先に述べたような逃走事案が頻発しているので、報道されることも増えたのだと思われます。
検察側が、保釈を認めようとする裁判所を牽制する目的で、あえて以前より積極的に報道発表している可能性もあると思います。
もっとも、保釈の取消しが決まって収容される段階の人や、実刑が決まって収監予定の人が、迎えに来た検察事務官や警察官を振り切って逃走するというのは、私は以前に聞いたことがありませんでした。
そういった事案が立て続けに起こっているということは、保釈の件数自体が増える中で、本来保釈を認めてはいけないケースでも保釈を認めてしまったということかもしれません。
以前から述べていますが、保釈の件数を増やすこと自体は問題ないし、望ましいと思います。
ただ、問題は、いかにして保釈をして良いケースと保釈してはならないケースを見極めるかという点で、一連の逃走事案は、その意味で重要な先例になると思います。