2020年7月30日付けでストーカー規制法に関する最高裁の判断が示されました。
事案は2件ですが、いずれも被害者の自動車にGPS機器を取り付けることにより被害者を監視していたところ、この行為はストーカー規制法の「住居等の付近において見張り」に該当しないというものでした。
GPS機器を使って自動車の動きを監視することはできますが、そのとき監視している側は被害者の「住居等の付近」にはいないので、「住居等の付近において見張り」には該当しないという、ある意味シンプルな判断です。
GPS機器が犯人の目の代わりをしているという主張は可能と思いますし、現に検察もその主張をしたようですが、認められなかったようです。
報道に違和感を覚えた方も少なくないと思いますが、類推解釈を許さない罪刑法定主義に忠実な判断であり法律家としてはやむを得ない判断だと思います。GPS機器を使った監視行為もストーカーとして刑事罰の対象にする必要はあるとは思いますが、現行法の解釈では無理があり、立法による解決が必要ということになります。
そもそもこのような問題が起こるのは、ストーカー規制法が非常にわかりにくい、使いにくい法律だという点に根本原因があると思います。条文が複雑で、どのような場合に犯罪になるのか非常にわかりにくいのです。
正直なところ、ストーカー規制法を正確に理解している検事は多くないように思われます。裁判官でさえ、誤解している人が結構いるのではないかとさえ思います。
また、ストーカー犯罪は通常の犯罪と少し異なる捜査経過をたどり、警察から検察に送致されたときの犯罪事実(送致事実)の内容と起訴状の犯罪事実(公訴事実)の内容が異なる場合が多いのです。通常は送致事実と公訴事実はほぼ同一ですし、そうでなければならないのですが、ストーカー規制法の場合は異なることがむしろ多いのです。
ストーカー規制法の事件処理には実は少なからぬ問題があるのですが、次回以降、ストーカー規制法がいかに複雑であるのかという点や、捜査上の特性について説明したいと思います。